人の歩行運動からの発電性能を大幅に向上 ウェアラブル端末開発への応用に期待 大阪公立大など
大阪公立大学は2日、人の歩行運動から電力を発電する素子の性能を約90倍に高めることに成功したと発表した。歩行運動の振動から小型電子機器を駆動可能な発電量を生み出す技術への応用が期待できる。
近年のIoT(Internet of Things、モノのインターネット)技術の社会実装に向けて、環境中に存在する熱や光などの微小なエネルギーから電力を取り出すエナジーハーベスティングと呼ばれる技術が注目されている。
その中で物体の振動の運動エネルギーから電力を取り出す振動発電は天気や気象に左右されないという特徴を持つ。ウェアラブル端末と呼ばれる身に着ける電子機器を充電不要にするためには、歩行などの人間の活動を利用して発電する技術が必要である。
大阪公立大学、兵庫県立大学、大阪産業技術研究所の研究グループは、圧電効果を利用した振動発電素子の研究に取り組んできた。周期が一定な人工的な振動から発電する素子は開発できたが、自然界の非定常な振動に対しては発電性能が大幅に低下するという課題があった。
今回の研究では、非定常な振動の一例として衝撃に着目。人の歩行運動などでは衝撃的振動が多く発生するが、理論解析から従来の素子では衝撃的振動から蓄積できる運動エネルギーの量が少ないことが発電電力低下の原因であることが明らかになった。
シミュレーション技術を用いて最適構造の設計を行い、単純な構造でありながら高いエネルギー蓄積性能を持つU字型の振動増幅パーツを考案した。そして、このパーツを圧電振動発電素子の下に取り付けたところ、衝撃的な振動に対する発電性能を約90倍向上させることができた。
この成果は素子の面積を増大させずに発電性能を向上させるものであり、同グループは歩行運動を含む非定常的な振動からウェアラブル端末を駆動することが可能な発電量を生み出す技術への応用が期待できるとしている。
画像提供:大阪公立大学
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