民家の水槽から日本産として新種のマリモを発見 科博が発表
国立科学博物館(以下、科博)は10日、山梨県甲府市の民家の水槽から発生したマリモ類が日本産としては新種と判明し、「モトスマリモ」と命名したと発表した。日本で見つかった球状になるマリモ類としては、これが「マリモ」「タテヤママリモ」についで3種目となる。
マリモは、阿寒湖のものが有名だが、北海道から本州のいくつかの湖沼でも見られる。マリモは球体の群体を作るほか、コケのようなマット状に生育することもあり、後者の方が一般的である。
科博は2011年から山梨県の山中湖のマリモ類の研究を行っており、山中湖村教育委員会と共同で2度の学術調査を行ってきた。これにより、山中湖には球状になる「マリモ」「タテヤママリモ」の2種のマリモが存在していることが知られている。
今回、山梨県甲府市の民家で、淡水魚のタイリクバラタナゴを飼育していた水槽内でマリモに似た藻類が大量に発生したとの連絡があり、調査を行った。
通常、「マリモ」は水槽で飼育を続けていると、糸状体が伸びて丸い群体が崩れてくるが、今回の藻は特別なことはしていないのに水槽での長期の飼育中に球形が維持されていた。加えて、その球体は「タテヤママリモ」よりも安定して密だった。
遺伝子解析の結果、今回の藻は「アエガグロピロプシス・クラブリゲラ」と一致した。これはオランダの熱帯水族館および中国の河川などから見つかっている種であり、二枚貝に付着して生活することが知られている。
今回の藻について科博は、水槽に飼育されているタイリクバラタナゴの産卵用に導入した本栖湖産の二枚貝に付着してもたらされたと推定し、和名を「モトスマリモ」と命名した。
この藻が本栖湖に在来種として生息していたのか、外来種として移入してきたかについてはまだ不明。「モトスマリモ」は「マリモ」「タテヤママリモ」と外見が極めて似ているため、今まで混同されてきた可能性もある。また、本栖湖では水槽で見られるような球状の群体ではなく、二枚貝に短い糸状体として付着していることも考えられるという。今後、科博は富士五湖での潜水調査を計画しており、現在、許可申請中だ。
画像提供:科博