OIST、活動しているタコの脳波を世界初記録
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は24日、覚醒した状態で動いているタコの脳波を記録することに世界で初めて成功したと発表した。
タコは、軟体動物の頭足類というカテゴリーに属する。軟体動物は無脊椎動物の一種で、基本的に体が柔らかく、頭部・体部・足部の三つで構成されており、その中には、貝、ナメクジ、カタツムリ、クリオネなどが含まれる。タコ・イカなどの頭足類は、筋肉や神経系が発達して運動能力に優れている。その脳は脊椎動物とは異なる進化を遂げていて、地球上で研究できる知的なエイリアンに最も近い存在とまで言われることがある。
しかし、タコの脳を研究しようとしても、脳波の測定が技術的に困難だった。体が柔らかくて頭蓋骨を持たないために、記録装置が外れないように固定することができない。また、力強く柔軟な腕によってワイヤーで固定しようとしてもすぐに引きちぎられてしまう。
問題を解決するためには、タコの腕が届かない皮膚の下に装置を設置する必要があった。OISTの研究グループは、小型で軽量のデータロガーに着目した。元々は飛行中の鳥類の脳活動を追跡するために設計されたものを防水加工してさらに小型にし、バッテリーを空気が少ない環境下でも作動できるようにして、最大12時間連続で記録できるようにした。
研究グループは、昼行性のワモンダコをモデル動物として選んで3匹に麻酔をかけて手術を実施。外套膜の筋肉壁にある空洞にロガーを埋め込み、電極を脳の垂直葉と中央上前頭葉と呼ばれる部位に埋め込んだ。この脳領域は視覚学習や記憶などの脳プロセスにも重要であると考えられている。
手術終了後にタコを元の水槽に戻しビデオで観察を行ったところ、タコは5分後に回復して睡眠や摂食、水槽内の移動などの行動を取った。12時間の脳活動を記録した後に、ロガーと電極をタコから取り外して、ビデオと脳波データを同期させることができた。数種類の脳活動パターンを確認することができて、その中には振れ幅の大きさや形状が哺乳類のものと似ているものもあれば、これまで報告されていないような非常に長く続くゆっくりとしたパターンもあった。
この手法は、種類の違うタコにも応用可能であり、タコがどのようにして学習し、社会生活を営み、体や腕の動きを制御しているかといった認知に関する多くの謎を解明するのに役立つ可能性がある。今後はタコに特定の課題を与えてそれに取り組んでいる時の脳の活動を記録する実験を行っていくとのこと。
写真提供:OIST(冒頭の写真はイメージ)