「上手な勉強のしかたがわからない」約7割に ベネッセ総研調査
東京大学社会科学研究所(以下、社会科学研究所)とベネッセ教育総合研究所(以下、ベネッセ総研)は4月6日、「子どもの生活と学びに関する親子調査2022」の結果を公表した。調査の結果、「上手な勉強のしかたがわからない」という子どもがこの4年間で増加し、約7割に上ることがわかった。また、学習方法が理解できるようになると学習意欲が向上し、さらに成績も上昇することが明らかになった。
両者は2014年に「子どもの生活と学び」の実態を明らかにする共同研究プロジェクトを立ち上げ、小学1年生から高校3年生、約2万1千組の親子を対象に、2015年以降8年間にわたり調査を実施し、12学年の親子の意識・行動の変化を明らかにしてきた。前回2021年の調査では、子どもたちの学習意欲が低下していることがわかったため、今回は学習意欲を高めるために何をすればよいかを考えるべく、「学習方法の理解」に注目した分析を行った。
学習方法を理解している子どもは、自分に合った勉強のやり方を工夫する(自己調整方略)、何が分かっていないか確かめながら勉強する(モニタリング方略)、計画をたてて勉強する(プランニング方略)など、メタ認知※1を使って自分の学習を客観的に捉え、自ら調整しながら学習をしていることがわかった。
こうした子どもは論理的思考が得意で決めたことをやり遂げる子が多く、学習方法の理解は、課題を乗り越えるための「一生モノの力」を獲得することにもつながるという。
しかし、そうした方法を取ることができず、「上手な勉強のしかたがわからない」という子どもが、2019年から2022年にかけて増加しており、67.5%にのぼることも明らかになった。「ほかの解き方がないかを考える」「習ったことをもっと詳しく調べる」などの方法を取る子どもが減少傾向にある。
この要因について社会科学研究所は、GIGAスクール構想などの情報化、学習指導要領の改訂もあり、学習に関する問題解決がスムーズにいかない局面が増えている可能性を指摘している。
さらに社会科学研究所は、上手な勉強のしかたがわからない子どもへの対応として、「メタ認知や精緻化※2は個々の授業や課題に効率的に組み込まれることで効果を持つものと考えられるため、教員組織全体の長期的な取り組みが必要になると考えられます。今回の調査結果をみると、小中学校では『自分の学習のやり方やプロセスをふりかえる』授業が2021年から減少しており、今後の改善が期待されます」と述べた。
同調査は2022年7~9月の期間に、全国の小学1年生~高校3年生の子どもとその保護者に対してウェブ上で実施され、小学4年生以上の8682組からの回答をもとに分析された。
※1メタ認知:自分の思考や行動を客観的に把握し認識すること。
※2精緻化:学んでいることについて自分の言葉で詳しく説明すること。学ぼうとしている概念同士のつながりを説明したり、学習内容を自身の経験や記憶などと関連付けたりして情報をより豊かにすることで、学習内容が定着しやすくなるとされている。
画像提供:ベネッセ総研(冒頭の写真はイメージ)