安全性と耐久性に優れた「全固体空気二次電池」 早大が開発
早稲田大学は19日、繰り返して充放電できる全固体空気二次電池を開発したと発表した。小型軽量で液漏れや発火の危険性がなく折り曲げても使える可能性があるため、モバイル機器などへの応用が期待できる。この研究結果はドイツ化学会の学術雑誌のオンライン版に掲載された。
空気電池は正極活物質として空気中の酸素を用いる電池である。負極には金属を用い、正極・負極の他にイオン伝導性の電解質から構成される。電池内部に正極活物質を内蔵する必要がないため原理的に大きなエネルギー密度を持つという特徴がある。また、充電を行うことにより繰り返し使用することができる二次電池である。
空気電池の課題として、多くの場合液体電解質を用いるために液体の漏れや蒸発、発火など安全性に懸念があることや、負極活物質が酸素や水分により劣化することがあげられる。
今回、研究グループは、有機化合物電極と固体電解質から成る空気二次電池を開発した。正極は白金触媒を含むガス拡散電極とした。負極には負極活物質として水素イオン(プロトン)を可逆的に取り込みながら酸化還元活性を示す有機レドックス化合物を用いた。電解質としてプロトン伝導性の高分子薄膜であるナフィオンを用いた。特性を評価したところ、負極活物質の利用率が40%以上向上し、全固体空気二次電池の容量も6倍以上向上した。また、一定速度における発電実験で、30サイクル繰り返して充放電可能なことを確認した。
今回開発した全固体空気二次電池は、液体電解質を用いないため安全性に優れ、酸素や水分により電極が劣化することがない。また、高分子化合物の特徴を活かしてフレキシブルなデバイスにできる可能性もある。今後、材料の高性能化・最適化を図りながら実用化を目指していく。
画像提供:早稲田大学(冒頭の写真はイメージ)