1000時間以上の寿命を示す新規発光デバイスを開発 九大など
九州大学は26日、有機ELよりも単純な構造で1000時間以上の寿命を示す電気化学発光セル(LEC)を開発したと発表した。さらなる長寿命化によって、環境にやさしい発光デバイスとなることが期待できる。この研究成果は国際学会誌にオンライン掲載された。
LECは電界発光デバイスの一種であり、最新のディスプレイデバイスである有機ELに対してコスト面で優位性があることから注目されている。
有機EL素子は多層の有機膜を積層する必要があるが、LECは発光材料と電解質を混合した単層の有機膜に電極を付けただけの単純な構造となる。このため、製造プロセスが簡便で印刷などの塗布プロセスが適用可能で、電極素材を選ばず安価な金属などが使用可能、さらに駆動電圧が低いという特長がある。
その一方、LECは素子の寿命が短いという課題があった。用いているイオン性の電解質が親水的で発光材料と混ざりにくく、駆動後に分離するなどして劣化の原因になると言われている。
九州大学とミュンヘン工科大学の研究グループは今回、LECデバイス向けに新規のデンドリマー(樹状高分子)型の熱活性化遅延蛍光(TADF)材料を開発した。
TADF材料はレアメタルを使用せずに高効率で発光できる、第3世代の発光材料と言われている。デンドリマーは分子が樹木状に規則正しく広がった構造を取っていて、一般的な高分子と比べて分子量分布がなく、純度や耐熱性が高いなどの優位性がある。
今回開発したデンドリマー型発光材料では、疎水基を親水基に置き換えることによって電解質とよく混ざるようになった。これによって、黄色発光で従来の10倍の1000時間以上の長いデバイス寿命を達成した。
また、電解質としてバイオマス由来の酢酸セルロースを用いることができること、透明電極として重金属を用いるITOの代わりに炭素のみから成るグラフェンを使用することができることも示しており、環境に配慮した材料で発光デバイスを作製できるようになる。
同グループは、今後は分子構造を見直すことでより高効率で長寿命のLECデバイスを創製していくという。この過程で黄や緑だけでなく青や赤といった発光色を示す材料も開発することで、3原色が揃ったフレキシブルなフルカラー表示素子や照明の開発につなげていくとのこと。
画像提供:九州大学(冒頭の写真はイメージ)