耐久性に優れた自動車排ガス浄化触媒を開発 国立科学博物館など
国立科学博物館と東京都立大学は9日、自動車排ガス浄化触媒の耐久性を劇的に向上させる触媒調製手法を開発したと発表した。新手法による触媒は1000℃にも及ぶ高温で性能が低下することがほとんどなかった。この研究成果はアメリカ化学会の論文誌に掲載された。
先進国では電気自動車の普及が進んでいるが、新興国を中心に自動車需要は増加し、また排ガス規制の強化もあって、自動車排ガス浄化触媒の需要が増加している。自動車排ガス浄化触媒は自動車の排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、未燃焼の炭化水素などの有害成分を無害化する材料で、主成分はロジウム、パラジウム、プラチナなどの貴金属元素である。課題としては、触媒が1000℃近くにおよぶ高温のエンジン排気ガスに長時間さらされることで劣化し、性能が低下することと、長い走行距離においても排ガス浄化性能を維持するために大量の貴金属が使用されることである。特にロジウムはプラチナやパラジウムよりも価格が10倍近く高いにも関わらず、その優れた性能から年間生産量のうち8割近くが自動車排ガス浄化触媒として用いられている。貴金属を大量に使用する自動車排ガス浄化触媒の耐久性向上は、貴金属使用量の低減や環境負荷の軽減につながる。
研究グループは、主成分のロジウムを比較的安価な元素であるモリブデンと複合クラスター化するという調整手法を開発。モリブデンを土台としてそこにロジウムを配置させたところ、一般的な手法ではロジウムとモリブデンが別々の微粒子を形成するのに対し、この手法ではロジウムとモリブデンが効率的に混ざった微粒子が形成された。1000℃という高温で触媒の耐久性を評価したところ、一般的な手法の触媒では大きな性能の低下が見られたが、この手法の触媒では耐久性が劇的に向上して高温による性能の低下はほとんどなかった。触媒の構造解析や反応メカニズムの評価から、複合クラスター化によってロジウムとモリブデンが微粒子中で効率よく混ざり、ロジウムとモリブデンの界面が高密度に形成されたことが重要であることが明らかになった。
今後は他の既存の技術との組み合わせを検討し、相乗効果が得られるように最適化していくとのこと。
画像提供:国立科学博物館(冒頭の写真はイメージ)