約100年前の森林組成と構造が明らかに 東大と北大
東京大学と北海道大学は22日、北海道北部の旧北海道帝国大学演習林の調査データから、近年の気候変動や森林伐採の影響を受ける以前の約100年前の森林の組成と構造を明らかにしたと発表した。この解析結果が今後の森林の炭素貯留能力評価や保全管理の基盤となることが期待できる。
増加し続ける大気中のCO2の吸収源として森林には大きな期待が寄せられているが、その潜在能力はよくわかっていない。また、全地球的に気候変動の影響が顕著になってきたのは1980年以降と言われているが、それ以前の森林がどのような組成や構造を持っていたかを定量的に知る方法は極めて限られていた。
東京大学と北海道大学の研究グループは旧帝国大学の演習林に着目した。これらの多くは1900年前後に設置されて、当初からさまざまな研究がされてきた。このうち旧北海道帝国大学の針葉樹と広葉樹が混じって生育している演習林では、3つの演習林で500か所以上の一本一本の樹種や直径などの毎木調査のデータが手書きの冊子でまとめられていた。同研究グループはこのデータをデジタル化して解析した。
同研究グループはこの1929年から1938年の毎木調査データを用いて、当時の森林の地上部バイオマス(AGB)を推定した。バイオマスは樹木の乾燥重量で、その半分が炭素量となる。その結果、AGBは現在と大きな差はないものの、現在より大きな個体が低密度で生育していたことが明らかになった。
また、針葉樹と広葉樹ではAGBに与える降水量の影響が逆であり、針葉樹は降水量が少ない地域で、広葉樹は降水量が多い地域で増加する傾向があった。近年は気温上昇だけでなく夏季の降水量も増加していることから、針葉樹が森林全体の構造や機能を支えていても、さらなる気候変動によって森林全体の炭素貯留能力が衰退していく可能性が示された。
この研究により、近年の気候変動以前の森林生態系の特徴を明らかにし、針葉樹と広葉樹それぞれを分析することで、森林炭素貯留能力に関連する環境要因の影響を詳細に理解できる可能性を示した。過去のデータを掘り起こして定量的に解析することが、未来の森林の生態系を予測し、評価するためにますます重要になっていくとしている。
画像提供:東京大学(針葉樹が優占する道北地方の森林)