夏休みの宿題にChatGPTを活用? AIを学びに生かす動き
昨今、ChatGPTなどの生成AIが大きな話題を呼んでいる。各業界での活用が模索される中、教育現場では利便性の反面、児童・生徒の批判的思考力や創造性、学習意欲への影響が懸念されている。こういった動きを受けて、文部科学省は4日、生成AIを小・中・高校で活用する際の考え方をまとめた暫定的なガイドラインを公開した。夏休みを迎えるにあたって国の指針が示される一方で、教育にさまざまな形で活用しようという取り組みも見られる。ChatGPTなどの生成AIと教育に関わる動きをまとめていく。
国がガイドラインを公表
文部科学省が公開した「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」では、生成AIを近い将来使いこなすための力を意識的に育てていく姿勢等は重要であるとしている。その一方で、著作権侵害のリスクなどの懸念点も挙げ、「教育現場の活用には、児童・生徒の発達の段階を十分に考慮する必要がある」とも記載されている。また、宿題などでAIの生成物をそのまま提出することは「評価基準によっては不正行為になり、自分のためにならないと指導する」などの工夫が必要だと言及している。
小学生の2割がChatGPT「知っている」
一方、ベネッセコーポレーションは13日、全国の小学3〜6年生とその保護者1032組に、ChatGPTの利用経験や今後の利用意向などについてアンケート調査を実施した結果を発表した。
子どもがChatGPTについて知っているかという質問に対し、「知っている」と答えた保護者は20%で、そのうちの69%は利用経験があった。また、子どものChatGPTの利用については56%の保護者が肯定的で、否定的な意見は30%に留まった。利用に肯定的な保護者の意見でもっとも多い理由は「新しい技術の活用力を養うよい機会になりそうだから」で、否定的な意見の保護者の回答理由でもっとも多いのは「自分で考えなくなりそうだから」だった。
生成AIの普及が急速に進む中、教育現場においても単に利用を制限するのではなく、AIのしくみを理解し、子どもたちがAIを学びに生かせるような工夫をしていくことが必要だろう。そのような事例を2つ紹介する。
AIキャラクターが自由研究をアシスト
ベネッセホールディングスは13日、小学生の学習に特化した独自の生成AI「自由研究お助けAI」を開発したと発表した。答えを教えるのではなく、子どもの思考力を養うAIキャラクターがナビゲーションしながら、夏休みの自由研究のアイデアやテーマ探しをアシストするツールだ。学年や自由研究にかけられる日数、興味がある分野、理科系・社会科系などを入力すると、AIが入力内容に合わせてテーマを提案する。子どもたちが安心・安全な環境の中で早くから生成AIに触れて学びに生かせるようにという意図で開発されていて、保護者と子どもそれぞれに対して、生成AIの使い方やルールなどを学べる解説動画も提供している。
「自由研究お助けAI」は、「読書感想文を書いて」「この計算式の答えを教えて」など直接答えを聞く質問には回答しないように設定されており、AIへの質問は1日10回まで、AIの回答は200文字程度に制限を設けるなどし、小学生の利用に適した設計が施されている。対象は小学校全学年で、7月25日〜9月11日の期間、無料で提供される。
ChatGPTと画像生成AIの組み合わせで絵本作成
また、IoT×AIプログラミング専門スクールSwimmyは8月、ChatGPTや画像生成AIを活用してオリジナル絵本を作成する体験教室を福岡県内で開催する。登場人物や簡単なストーリーなどのアイデアをもとに、ChatGPTにタイトルやあらすじを提案してもらい、画像生成AIに挿絵イラストを作成してもらう。望んだ回答や提案が得られるよう質問文やAIへの指示を工夫する必要があり、AIを理解し的確な指示を出すプロンプトエンジニアリングについての理解を深められる。
文科省のガイドラインを受け、生成AIの活用について模索が進んでいくだろう。教育現場に生成AIがどのように取り入れられていくのか、今後の動向に注目したい。
画像提供:ベネッセ(冒頭の写真はイメージ)