10月5日は世界教師デー 恩師へ感謝を伝える日に
日本ではあまり知られていないが、10月5日はユネスコが定める「世界教師デー(World Teachers’ Day)」だ。世界教師デーは教師の地位向上に努めることを目的としており、1966年10月5日に、ユネスコ特別政府間会議で「教員の地位に関する勧告」が採択されたことを記念して1994年に制定された。
教師は子どもの発達や人格形成において重要な職業であるにも関わらず、近年では世界的に人材が不足しており、教師の労働条件や地位の低下により状況が悪化している。そういった背景から、世界教師デーは、教員がいかに教育の変革を推進しているかを記念するだけでなく、教員の才能や使命を十分に発揮するために必要なサポートについて考え、さらに教職という職業の未来を世界規模で再考する日とされている。
この記事では、国内外でどのような習慣や取り組みがあるのか紹介する。
世界各国の「教師の日」
世界の多くの国に「教師に感謝する日」が存在している。各国独自に教師の日を設定していることが多く、一般にも広く認識され、国民の祝日に定めている国も少なくない。
アメリカでは5月の第一日曜日の週の月曜日から金曜日までの週をTeacher Appreciation Weekとしており、数週間前から学校から生徒の保護者にTeacher Appreciation Weekに関するお知らせが来るほど重要視されているイベントとなっている。生徒からカードやプレゼントが贈られることに加えて、この期間、教員に食べ物を無料または割引した値段で提供するレストランがあったり、教師の好きなものリストがメールで保護者に届いたりすることもあるそう。
中国では1985年に9月10日が教師節として定められた。教師節当日には各省の役人や官僚が学校を訪問して教師たちに意見を聞く座談会が行われ、その様子がテレビで放映されることもある。また、生徒が教師に花やお菓子などのプレゼントを渡したり、ネット通販サイトでは「教師の日」セールが行われることもある。
台湾では、中国春秋時代の思想家・哲学者で儒教の祖『論語』で知られる孔子の生まれた日である9月28日が教師節として定められている。9月に新学期が始まるため、現任の教師だけでなく前年にお世話になった先生にも、この日に花やカードなどを贈ることで感謝を表すことが多い。
韓国では李氏朝鮮 第4代国王の世宗大王の誕生日である5月15日が教師の日として1965年に制定され、1982年からは法定記念日となっている。花やカードだけでなく、商品券や化粧品など豪華なプレゼント合戦が毎年繰り返されるほどの加熱ぶりで、贈り物の値段が高額で賄賂のようになってしまうことが大きな問題になっていた。そこで、2016年9月に法律が制定され、現在は教職員にプレゼントをすること自体が禁止されている。
ベトナムでは11月20日が教師の日になっている。学校では感謝パーティーが催され生徒から教師に贈り物が渡されたり、生徒たちが踊りや劇・歌を披露したりする。ベトナムでは公立学校の教師は給与が極めて低く、他の職業と比べて給与水準が最低レベルとも言われているが、「教師は第二の父母」というフレーズがあるほど教師への敬愛の文化があり、教師の日は重要視されている。
教師デーにちなんだイベント
ユネスコは、今年の世界教師デーのテーマを「私たちが望む教育のために必要な教師:教師不足を覆す地球規模で取り組む緊急課題」とし、教員数の減少を食い止め、その数を増やすことの重要性をグローバル・アジェンダの最優先事項にすることを目標としている。パリのユネスコ本部にて10月5〜6日の2日間に渡り、講演やパネルディスカッションなどのイベントを開催する予定だ。
日本国内はというと、教員育成に携わる認定NPO法人Teach For Japanが、ベネッセコーポレーションとの共催で「教師の日ギャザリング2023」を10月1日に開催した。教育の先進自治体として知られる埼玉県戸田市の戸ヶ﨑勤教育長や、前鎌倉市教育長で現在は文科省初等中等教育局教育課程課専門官の岩岡寛人氏、慶應義塾大学の中室牧子教授らが登壇し、「明日からの教育を教師とともに考える」「教育に科学的根拠を」などのテーマで講演が行われた。
また、オンライン習い事サイト「カフェトーク」を運営するスモールブリッジ(東京都渋谷区)は、カフェトークの「応援機能」を10月3〜7日の期間に利用した人の中から、抽選で100名に図書カードをプレゼントするキャンペーンを開催している。世界の講師陣が語学・音楽・ビジネス・趣味などのオンラインレッスンを提供するカフェトークは、手持ちのカフェトークポイントをメッセージと共に講師に贈る応援機能がある。
「教師の日」普及委員会では、教師の日の啓蒙ポスターを作成している。日本ではあまり馴染みのない「教師の日」だが、恩師に思いを馳せ、感謝を伝える機会にしてはいかがだろうか。