有害なシアン化物を用いない銀電気めっき溶液を開発 宇都宮大

有害なシアン化物を用いない銀電気めっき溶液を開発 宇都宮大

宇都宮大学は7日、有害物質のシアン化物を用いない銀電気めっき溶液の開発に成功したと発表した。シアン化物を用いないことにより安全性が高まり環境への負荷、管理コストが軽減されるという利点がある。この研究成果は米国電気化学会誌にオンライン掲載された。

銀めっき皮膜は、優れた電気伝導性・熱伝導性や反射性を持つために工業部品に幅広く使用されている。一方、従来から使用されている銀めっき溶液には最も毒性の強い化学物質の一種であるシアン化物が用いられている。高温でシアン銀めっきを操作すると作業者の健康や環境に高いリスクをもたらすほか、安全な作業環境の確保、厳正な薬品の管理、シアン排水処理に多大なコストがかかるなどの問題がある。そのためシアン化物を用いない、シアンフリーの銀めっき溶液の開発が近年進められている。

めっき溶液においてシアン化物は金属イオンと結合して錯イオンを形成させるための添加剤である錯化剤として用いられる。研究グループは錯化剤としてチミン(5-メチルウラシル)を用いて、シアンや既に報告がある他のシアンフリーの錯化剤と性能を比較した。その結果、錯化剤としてチミンを用いた場合、シアン銀めっきの無光沢皮膜と比べて、より微細な結晶構造を持つ半光沢銀めっき皮膜が得られた。また、皮膜の硬さについてもシアン銀めっき皮膜と同等な皮膜硬度の値が得られた。さらにシアンフリー銀めっき溶液にポリエチレンイミンを添加した場合は、光沢被膜が得られるようになった。

有害なシアン化物を用いない銀電気めっき溶液を開発 宇都宮大

今回の研究により、シアン化物を用いないノーシアン系でプロセスを容易に取り扱える可能性が広がり、適用範囲の拡大が期待できるとしている。

写真提供:宇都宮大学(冒頭の写真はイメージ)