中高生期のバスケやバレーの運動経験が、高齢期の骨密度に影響 順天堂大
順天堂大学スポートロジーセンターの調査から、中学・高校生の時にバスケットボールやバレーボールをしていた人は、高齢期(65~84歳)の骨密度が高くなる可能性があることがわかった。本成果は、青年期に骨に加わる刺激の大きいスポーツを行うことが、数十年にわたって骨密度の維持に役立ち、骨粗鬆症の予防や、要介護につながりやすい転倒・骨折のリスク軽減に役立つ可能性を示唆している。『Frontiers in Physiology』のオンライン版に論文が公開された。
骨量は20代にピークを迎え、その後50歳頃まで維持し、加齢に伴い減少していく。特に女性は閉経後に急激に減少し、70歳以上の日本人女性の約40%が骨粗鬆症と報告されている。骨粗鬆症を背景とする転倒・骨折は女性の要介護になる原因第2位となっている。骨密度は一度低下すると上がりづらく、青年期に最大骨量を高めておくことが高齢期の骨密度の維持に重要とされる。
青年期に運動を実施すると最大骨量を高められることはよく知られており、特に、バスケットボールやバレーボールなど骨に加わる刺激の大きい運動をしている人は、水泳やサイクリングなど骨に加わる刺激の少ない運動をしている人に比べて骨密度が高くなるといわれている。しかし、これまで青年期に実施した運動種目の違いが高齢期の骨密度に影響しているのかはよくわかっていなかった。
研究グループは、東京都文京区の高齢者1596名の大腿骨頸部と腰椎の骨密度を評価した。また、質問紙により中学・高校生期に運動部に参加していたか、していた場合は何のスポーツをしていたかを調査した。その結果、中学・高校生期にバスケットボールをしていた人では男女共に高齢期の大腿骨頸部骨密度が高く、バレーボールをしていた女性では、高齢期の腰椎骨密度が高いことがわかった。研究グループは、「競技レベルや運動量の多いアスリートなどでなく一般人であっても、数十年前の中学・高校生期の運動経験によって得られた骨利益が高齢期まで長期に渡って維持される可能性を示している点が本研究の興味深い点」と述べている。
昨今、少子化が進むなか、部活動の運動部員数は減少傾向にある。スポーツ庁の調査では、2009年から2018年の間に中学生の運動部活動所属者が約13.1%減少したと報告されている。
今回の研究から、中学・高校生期の運動が高齢期の骨密度維持と関連することが示唆された。研究グループは、今後さらに運動強度、運動量、運動時間の詳細について研究を進めていくとしている。部活動については現在さまざまな議論がされているが、生涯にわたる健康維持の観点からも、青年期にどのようにスポーツに取り組むべきなのか、今後の研究によってより明らかにされていくことを期待したい。
画像提供:順天堂大学(冒頭の写真はイメージ)