燃焼排ガスから水蒸気と熱を取り出す新たなシステムを開発 広島大学

広島大学は27日、水蒸気回収膜を用いた、燃焼排ガスから水蒸気と熱を取り出すシステムを開発したと発表した。廃棄物焼却施設に導入すると、施設外部からの水の供給を不要にすると同時に、燃焼熱の70%を回収できる。このシステムは廃棄物焼却施設だけでなく、火力発電所や化学プラントなどあらゆる水蒸気排出源にも適用が期待できる。この研究成果は英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。

プラントなどで排出する燃焼ガスの中で水蒸気の占める割合は多く、それを捨てることがエネルギーロスにつながっている。排出ガスから水蒸気のみを回収して熱と水を再利用できると、エネルギー的にも水資源的にも有用だが、それができるのは一部のプロセスにとどまっている。

また、窒素や酸素は透過させず、水蒸気のみを透過させる分離膜は存在していたが、長期の水熱安定性(150-200℃程度)に技術的課題があり、高温での水蒸気回収技術としての応用は困難だった。

同研究グループは、水熱安定性に優れるオルガノシリカ膜を開発。まず、この膜を用いての水蒸気、空気、塩化水素を含む模擬ガスからの水蒸気回収試験をラボスケールで半年以上行い、水熱安定性を確認した。続いて、ベンチスケールのオルガノシリカ膜ユニットを稼働中の廃棄物焼却施設内で使用し、実ガス条件下で水蒸気回収を行えることを実証した。

この膜を用いた水蒸気回収システムでは、極めて純度の高い水蒸気74t/d(トン/日)が回収され、潜熱利用後に液体となった水を再利用できる。この場合に水蒸気から回収できる、システム動力を差し引いた正味の熱は約200GJ/d(ギガジュール/日)だった。これは廃棄物燃焼熱の約70%回収に相当する。また、このシステムの導入により、施設外部からの水供給が不要となるため、近くに大規模な水源がなくても運転することが可能になる。さらに、水蒸気回収後の排出ガスは水分が少ないため、煙突から白煙(凝縮した水蒸気)が生じないという副次効果もあるという。

今回の研究により、水蒸気を新たな水源として示すとともに、水蒸気の有するエネルギーを利用することで更なる省エネルギー化が可能となることを明らかにした。今後は、廃棄物焼却施設への導入にとどまらず、火力発電所や化学プラントなど、水蒸気を大気に排出しているあらゆる排出源への導入を検討していく。

水蒸気回収システムを組み込んだ廃棄物焼却施設

画像提供:広島大学