深海に生息する貝が共生細菌により栄養を得る仕組みを解明 タンパク質が鍵

超小型の深海帯流速計を開発 深海研究への貢献に期待

奈良先端科学技術大学院大学は7月31日、深海の高圧の環境下でも半永久的に自立運転が可能な超小型流速計の開発に成功したと発表した。CO2を吸収する深海のブルーカーボンの状況把握など、様々な深海研究の分野への貢献が期待できる。この研究成果は国際学術誌にオンライン掲載された。

水深200m以深の深海は暗黒で超高圧の世界であり、その場の海水の流れを詳細に観測することは困難で、深海は宇宙と同じく謎に満ちた未知の領域と言われている。しかし、地球環境の温度や気候変動などの自然現象を知るためには、海流の深さ方向を含む立体的な流れを解明することが重要だ。また、水深4000m以深の深海帯には、深海に生息する生物の生命活動を維持するための生物ポンプと呼ばれるメカニズムがある。深海生態系のメカニズム解明のためにも、深海の流れの実態を把握することが必要とされている。

これまでの研究では超深海流速計が使用されてきたが、この装置は全長数メートル、重量数十キログラムと巨大で、バッテリーの関係で一度に数時間の測定しかできず、実測ポイントを増やすことが難しかった。奈良先端科学技術大学院大学と中国科学院深海科学与工程研究所などの国際研究グループは、電力供給が困難な深海での安価で小型な長期自立計測機器開発を目指した。

今回開発した流速計に用いたのはTENG(Triboelectric Nanogenerator)発電装置だ。これは2種類の異なる材料が接触・分離することで電荷が移動し、電圧が発生する摩擦帯電効果を利用している。これを用いて、約20cmの筐体で45M~75MPaの超高圧に耐えられる流速計の開発に成功した。この流速計は流れで発電しながら、電圧・電流と流速の相関から流速を計測できる。自立発電しながらの計測を実現しているため、海流がある限り長期の流速計測と蓄積が可能だ。

今回開発した深海流速計を利用することで、深海での長期間の多点同時計測が可能になった。これにより、深層海洋大循環の解明、深海生命科学関連分野への貢献、深海のブルーカーボンの動態や貯留メカニズムの解明など、様々な深海研究や環境モニタリングの分野で重要な役割を果たすことが期待される。

画像提供:奈良先端科学技術大学院大学