皮膚への電気刺激で食品の塩味を増強する技術を開発 味の素、東大等
味の素、東京大学、お茶の水女子大学の研究グループは、皮膚表面からの電気刺激により塩味や風味が増強される技術を開発し、実際の食品を使った実験によって効果が実証されたと発表した。新たな減塩手段として、世界的な健康課題となっている塩分過剰摂取の防止に役立つことが期待される。日本高血圧学会誌で発表された。
塩分の過剰摂取は様々な健康リスクの原因となると言われている。世界保健機構(WHO)は1日当たりの食塩摂取量を5g未満にすることを推奨しているが、それに対し厚生労働省の調査によれば日本人の1日当たりの摂取量は男性10.9g、女性9.3gとなっている。
近年では、フォークやスプーンなどの食器を介して舌に電気刺激を加えることで食器が口に触れている間の食品の味を増強させる技術が報告され、液体系食品への活用が始まっている。一方、皮膚表面に設置した電極によって電気刺激を加える経皮電気刺激では、咀嚼・嚥下中も効果があることから、固体系食品にも応用が可能とされるという。
今回の研究で同グループは、まず塩分濃度が低い食品のモデルとして濃度が0.3%、0.6%の食塩水の塩味増強効果を検証。その結果、いずれも塩味が強まることが実証された。
次に、梅がゆ・餃子など、液体・固体を含む和洋中様々なジャンルの6種のメニューについて、塩分が半分になるように希釈した食品を用意し、経皮電気刺激の影響を検証した。その結果、全ての食品で有意な塩味の増強が確認された。また食品によっては、塩味だけでなくうま味や酸味も増強し、かつ風味も変化することが示され、電気刺激は味だけでなく風味にも影響を与えることがわかった。
この結果を受けて、味の素では、経皮電気刺激の技術をより活用しやすくするためのデバイス仕様を検討し、首または耳に掛けて使用するウェアラブルデバイスのコンセプトを開発した。このデバイスを食事中に装着することで、喫食している食品の塩味を持続的に増強することが可能だという。同社は今後、このウェアラブルデバイスを活用したサービス開発を進めていくとしている。
画像提供:味の素