予防目的の歯科受診が累積介護費用を抑えることを明らかに 東北大

予防目的の歯科受診が累積介護費用を抑えることを明らかに 東北大

予防目的で歯科受診をしている人では、未受診者より8年間で累積介護費用が約11万円低い。そんな調査結果を東北大の研究グループが発表した。これは歯科受診と累積介護費用との関連を示した初めての研究で、歯科受診を通じて口腔の健康を維持することが、介護費用の抑制につながる可能性が示唆された。米国老年学会の『The Journal of Gerontology: Series A』で論文が公開された。

超高齢社会を迎えた日本において、介護費用は増加の一途をたどる。2019年には11.7兆円にまで達しており、介護保険制度の維持のためには、効率的な費用削減が必要とされる。
これまでの研究で、口腔状態の悪化が要介護状態になるリスクの上昇と関わることが示されている。研究グループは、歯科受診と累積介護費用の関連の有無を確かめるため、過去6か月以内の歯科受診の有無が、その後8年間の累積介護費用と関連しているかどうかを検討した。

同グループは日本老年学的評価研究(JAGES)の調査に回答した、2010年時点で65歳以上の自立した高齢者8,429名を対象に、8年間の追跡調査を実施。平均年齢は73.7歳で、追跡期間中に17.6%が介護サービスの利用を開始し、平均累積介護費用は487,704円だった。分析の結果、過去6か月以内に予防目的の歯科受診を行った人では行わなかった人と比べて累積介護費用の予測値が108,990円低い結果となった。また、治療目的の受診を行った人では行わなかった人と比べて80,670円低く、予防または治療目的の歯科受診を行った人では行わなかった人と比べて98,060円低い結果となった。

予防目的の歯科受診が累積介護費用を抑えることを明らかに 東北大

調査結果から過去6か月以内の歯科受診、特に予防目的での歯科受診の実施と、その後8年間の累積介護費用の低さが関連していることが示された。歯科受診を行うことで口腔の健康が保たれ、要介護状態の発生が先送りされた可能性や、要介護状態になった場合においても、重症化が抑えられたことで介護費用の増加を抑制できた可能性が考えられる。

同グループは今後、歯科の処置内容などを含めた解析を行うことで、どのような治療や予防行為が介護費用の削減に寄与するのかについて、さらに検討を進めるとのこと。

画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)