NASAのボイジャー1号、通信トラブルを乗り越えて通常運用を再開
米航空宇宙局(NASA)の探査機ボイジャー1号は、先月の通信トラブルを乗り越え、通常運用を再開した。この探査機は突然、主要な通信手段であるXバンド送信機をオフにし、はるかに弱いSバンド送信機をオンにするという予期せぬ動作を行った。地球から約249億km離れた場所で起きたため、ミッションチームは一時的に科学データや機器の状態を確認できなくなっていた。しかし、11月初めにXバンド送信機の再起動に成功し、11月18日の週には稼働中の科学機器からのデータ収集も再開した。
今回の問題の原因は、探査機の「故障保護システム」が作動したことにある。このシステムは、電力不足を感知すると、飛行に必須ではないシステムを自動で停止し、電力を節約する仕組みだ。しかし、すでに科学機器以外のすべての必須ではないシステムがオフになっていたため、Xバンド送信機をオフにし、代わりに消費電力の少ないSバンド送信機をオンにしたというものだった。
ボイジャー1号と2号は、打ち上げから47年以上経過しており、現在も恒星間空間で運用されている唯一の探査機だ。これらはプルトニウムの崩壊熱を電気に変換して動作しているが、毎年約4ワットの電力を失い続けている。そのため、エンジニアたちは5年前から飛行に不可欠ではないシステムを次々にオフにし、科学機器の一部のヒーターもオフにした。科学機器の多くは想定よりも低い温度でも動作し続けており、耐久性の高さに驚かされている。
電力の限界に挑む中で、ボイジャーミッションは科学界に貴重なデータを提供し続けている。現在も10台の科学機器のうち4台が星間空間の粒子やプラズマ、磁場の研究に用いられており、その成果は地球上の研究者たちにとってかけがえのないものとなっている。しかし、探査機の老朽化により技術的な問題が頻発しており、ミッションを支えるエンジニアたちは新たな課題に直面している。それでもなお、彼らの努力により、ボイジャー探査機は未知の宇宙のさらなる解明に挑み続けている。
画像提供:NASA