コンクリートが吸収したCO2量を推定する手法を開発 名古屋大など
名古屋大学と東京大学は15日、コンクリートの建造物にCO2が固定された総量を算出する手法を開発したと発表した。建設材料のライフサイクル全体を考えた材料設計への活用や、コンクリート分野におけるカーボンニュートラルへの貢献が期待できる。
2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを実現するために、さまざまな取り組みがされている。コンクリートのカーボンニュートラルへの移行もその一つである。
コンクリートは、石灰石や粘土を高温で焼いた後に粉砕して作られる「普通ポルトランドセメント」に水、砂、砂利などを混ぜて製造される。「普通ポルトランドセメント」の製造過程には熱エネルギーが必要で、石灰石(CaCO3)の熱分解で多量のCO2が発生する。世界では年間45億トン(2015年時点)のセメントが生産されており、1トンのセメントを製造する際に約800kgのCO2が排出される。これまでの人類の活動に伴うCO2排出量のうち、5~8%がセメント生産によるものとされており、環境への影響が大きい。
鉄筋コンクリート構造物においては、空気中のCO2とコンクリートの構成成分が反応して炭酸カルシウムを生成する「中性化現象」によって、コンクリートが劣化することが問題視されてきた。ところが近年になって、中性化現象を通じてコンクリート構造物中にCO2を固定することができるという点が注目されるようになった。
研究グループは、コンクリートが空気中のCO2を吸収し固定化する、その総量を求める手法を開発した。まず、日本国内のセメント生産量に関する資料、コンクリート構造物の廃棄物データ、建築構造物の床面積などの過去の実績をもとに、年代ごとのコンクリートの生産量と廃棄(除却)量を推定した。続いて代表的な構造物における建物表面積と体積の比率や表面における状態を整理し、コンクリート構造物の表面からどの程度中性化が進行し、CO2が固定されるかを推定した。
その結果、現在までにセメント製造で約3000万トンのCO2が排出され、製造した構造物と解体後のプロセスで固定化されたCO2は約140万トンとなることがわかった。また、近年では、その年の生産時に排出するCO2量に対して約14%が固定されていることがわかった。
今回開発した手法は、コンクリート分野においてCO2の固定を評価する際の指針として、戦略立案へ活用されることが期待される。今後は、セメント代替材料の開発がCO2固定量に及ぼす影響評価やアジア地域のCO2固定量評価に取り組むとのこと。
画像提供:名古屋大(冒頭の写真はイメージ)