「2025年 日本の農業ビジネス」

[書評]『2025年 日本の農業ビジネス』 日本の農業のこれからを語る

発行されたのは2017年。コロナウイルス蔓延によるロックダウンも予見できていなかったときにおよそ10年後を予言するように書かれた本書。2025年の今読んで何ら違和感がなく「まさにその通り!」と膝を叩きたくなるような日本の農業のこれからを語っている。目新しい言葉や斬新なアイデアはそれほど多くない。新鮮なのは発想の転換、今まで否定的にとらえられがちだった傾向を世界の動きを合わせて肯定的にとらえなおして新しい農業の道筋を提示していることだろう。

日本の農業の変遷についてはネガティブに語られることが多い。「就業人口が減っている」「食料自給率が減っている」「米や野菜の価格が上がらない」など、減る数字だけを見て、将来への憂いを感じることが少なからずあるだろう。それは他の業界も同じで、減少=衰退という認識は多いはずである。しかし、数が減る、数字が減ることがネガティブなことではないと、本書を読むと思い知らされる。日本の農業の場合、農家は減っているが農業を営む企業の数は増えている。年収の少ない農家は減っているが年収の多い農家は増えている。耕作面積の少ない農家は減っているが、耕作面積の大きい農家は増えている。この変化によって日本の農業がどう変わっていけるのかは本書を読んで確かめてほしいが、何かが減っていくことの裏側に、増えていくものや好転していくものもあるということを見逃したくはない。

転換期だからこそ現実を直視し、いろいろな策をひねり出し状況が変わる場合もある。過去の歴史を見ても、業界の転換期にうまく政策や経営方針を変えることで今成功している国や会社もある。視点を変え、ネガティブにとらえられていたことの本質を見極め、今まで他の業界で当たり前だったことで農業界では当たり前ではなかったことをやってみる、それは2025年以降の日本の農業の突破口になりそうだと、本書は教えてくれる。

『2025年 日本の農業ビジネス』
編者:21世紀政策研究所
発行日:2017年3月20日
発行:株式会社講談社

(写真はイメージ)