
海底探査のための高性能なレーザースキャナーを開発 JAMSTEC
海洋研究開発機構(JAMSTEC)は18日、三菱電機ディフェンス&スペーステクノロジーズ株式会社、浜松ホトニクス株式会社と共同で、ソナーよりも画像解像度が高く、カメラよりも計測レンジが長くて広い高性能海中レーザースキャナーを開発したと発表した。可視光(緑)レーザーと紫外光レーザーを同時計測することで、これまでは見えなかった海底の特異点を高精細に可視化することが期待できる。
日本の水域には、有用かつ産業化が期待される海底資源が存在しているとされ、既知および未知の海底資源域を効率的に調査あるいは探査する技術が重要となっている。海底資源の探査においては、その一部が海底面に表出している特徴的な地形を探査することが有効なことがある。このような海底の特異点を効率的に探査することが実現されれば、海底資源の賦存量の把握や、新たな海底資源域の発見に繋がり、その産業化にも大きく貢献できる。しかし、従来の技術である音波によるソナーは、長く広い範囲の計測が可能である反面、画像解像度が比較的低く、また他の装置・システムとの音響干渉に問題があった。同じく従来技術のカメラは、画像解像度が比較的高い一方、照明が到達する限られた範囲しか可視化できず、海底近傍まで接近しようとすると安全性と効率性に問題があった。そこでJAMSTECでは、海中探査機を適用した光学海底探査に焦点を当て、詳細かつ精細に海底を可視化する海中レーザースキャナーの開発に取り組んできた。
今回、JAMSTECを代表機関とする研究プロジェクトは、可視光(緑)レーザーおよび非可視光(紫外)レーザーをそれぞれ適用する高性能海中レーザースキャナーの深海用実証機2機(Greenレーザー実証機|UVレーザー実証機)を開発した。
Greenレーザー実証機では、測定レンジ60m(往復伝搬距離120m)を初達成した。このような中距離計測が実現すると、海中探査機を海底の近傍まで接近させることなく、安全な高度から海底を効率的に可視化することができる。UVレーザー実証機で用いる紫外光は、今まで海底探査で行ったことがない取り組みで、可視光とは根本的に異なる知見となりうる。両実証機で、光学カメラとして最高性能を有する8Kスーパーハイビジョンカメラを上回る最高8640画素を実現させた。
2023-2024年度に両実証機の深海試験を初島東方の海域(水深約900m)、および大島南方に位置する大室ダシ・大室海穴(水深約200m)で行った。JAMSTECが所有する遠隔操作型無人探査機「かいこう」の機体後部両舷に各実証機をそれぞれ搭載。Greenレーザー実証機においては、測距レンジとして最大64m(往復伝搬距離:128m)を記録し、深海域の海底に対するレーザー測距レンジとして世界最高水準であることが確認された。UVレーザー実証機では、測距レンジとして15m(往復伝搬距離:30m)を記録した。同じ海底域で両実証機でのスキャン画像を比較したところ、Greenレーザーでは海底反射が計測できている箇所が、紫外レーザーでは計測できていないことが確認された。この場所には白色系の底生生物が分布しており、当該箇所が紫外波長を吸収してしまう特性を持っている可能性、または当該箇所が蛍光特性のような性質を持っていたことにより反射光の波長が変化した可能性が考えられる。
この研究により、海中レーザーを適用した海底可視化技術に関する基礎が確立され、その有効性が示された。今後はこの技術の実用性および実装性の向上を目的として、小型化、軽量化、量産化についての検討を進めていくとのこと。

画像提供:海洋研究開発機構(冒頭の画像はGreenレーザー実証機による最大レーザー測距レンジ達成時の距離画像)