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琵琶湖固有の魚・ホンモロコの産卵環境を解明、環境保全策を示唆 近大

近畿大学は17日、琵琶湖固有種の魚ホンモロコが産卵場所として選ぶ条件を解明したと発表した。重要な水産資源であるホンモロコの産卵環境保全に役立ち、資源回復に貢献することが期待できる。この研究成果は、日本水産学会発行の国際学術誌に掲載された。

ホンモロコは琵琶湖固有のコイ科魚類である。淡泊な味をした白身の魚で、「コイ科の魚類では最もおいしい」と言われる。1995年以前は年間数百トンも漁獲されていたが、それ以降は個体数が激減して絶滅危惧種として指定され、資源回復が求められている。1995年以前は、ホンモロコの産卵場所は琵琶湖の南部流域を含むほぼ全沿岸域に分布していた。しかし、外来魚の影響や産卵繁殖場の減少などに加え、琵琶湖の水位操作による卵の干上がりが原因となって減少した。ホンモロコがどのような条件の場所を産卵場所として選択するか、棲息している植物や流速などとの関係が考えられていたが、定量的に裏付けられてはいなかった。

研究グループは、琵琶湖沿岸の大津市と守山市の湖岸において344カ所の調査区画を設定し、産卵盛期である5月に、区画内のホンモロコの卵の有無とさまざまな環境データを測定することで産卵場所の選択性を検証した。統計的に解析することによって、選ばれることが多い産卵場所は、ヤナギの根が繁茂し、水深が浅く、流れが早い場所だということが明らかになった。ヤナギの根は水中まで繁茂し、その一部は水面に露出し、そこが産卵場所になっていた。流れが遅い場所は泥が付着しやすく卵のふ化率が低下するが、流れが速く波当たりのよい波打ち際は酸素が豊富に供給され、ふ化率が高いと考えられる。

現在の琵琶湖では、5月から6月にかけて水位を低下させる操作が行われている。これはホンモロコの産卵時期と重なり、多くのホンモロコの卵が水上に露出し死亡することが確認されていた。今回の研究結果を踏まえて、産卵時期においては水位を一定に保ち、産卵環境である波打ち際のヤナギの根などの機能を維持することで、資源回復につながることが期待できる。

琵琶湖の重要水産魚種 ホンモロコ(左)、ヤナギの根に産み付けられたホンモロコの卵(右)

画像提供:近畿大学(冒頭の写真はイメージ)