京大、脳の体積と幸福度の関連を解明

京都大学大学院医学研究科などの研究グループが成人を対象に、磁気共鳴画像(MRI)と幸福度調査の質問紙回答との関係を調査し、頭頂葉の内側面に位置する楔前部けつぜんぶの体積が大きいほど幸福感を強く感じることが分かった。

先行研究では主観的幸福が質問紙で安定して計測されることは示されていたが、その神経基盤は未明であった。本研究では神経基盤を理解することで客観的に調査でき、幸福が生み出される脳内メカニズムの示唆も得られる。

同グループはMRIで脳の構造を計測し、質問紙では主観的幸福を調べ、またその感情成分である快感情強度と不快感情強度、認知成分である人生の目的の見出しやすさを調べた。その結果、右半球の楔前部の灰白質体積と主観的幸福との間に正の関係が示された(図1)。また同じ領域が快感情強度・不快感情強度、人生の目的の統合指標と関係することが示された(図2)。これは楔前部の体積が大きいとポジティブ思考かつ人生の目的を見出しやすいことを意味する。この結果から、幸福は楔前部で感情的・認知的な情報が統合され生み出される主観的経験であることが示唆される。

研究結果は、20日に英国科学誌『Scientific Reports(サイエンティフィックリポーツ)』誌に掲載。主観的な幸福を客観的、科学的にアプローチできると期待され、今後の研究で異なる文化間といった主観的評価の比較が難しい場合にも、幸福を客観的に評価・比較することの可能性が広がる。また、瞑想トレーニングが楔前部の体積を変える知見に伴い、科学的データに裏打ちされた幸福増進プログラムの作成も期待されている。

京大、脳の体積と幸福度の関連を解明
図1

京大、脳の体積と幸福度の関連を解明
図2

画像提供:京都大学
(写真はイメージ)