はやぶさ2、地球スイングバイに成功
小惑星探査機「はやぶさ2」は3日、目的地の小惑星「リュウグウ(竜宮)」に向かうため地球に接近し、地球の引力を利用した「地球スイングバイ」に成功した。無事リュウグウに向かう軌道に入れたかどうかは、確認に1週間ほどかかるという。
はやぶさ2は、昨年12月3日に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。地球に近い軌道を描いて太陽を1周し、ちょうど1年後の12月3日19時7分ごろ地球に最接近し、ハワイ上空の高度約3100kmを地球から見て北から南に秒速約10.3kmで通過した。
はやぶさ2は太陽電池パネルの展開幅も6mと決して大きくはないため、最接近時でも地上から肉眼で見ることはできなかったが、日本各地の天文台や科学館が撮影に挑戦した。冒頭の写真は長野県木曽町にある東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に、同大学の酒向重行助教らが開発した超広視野高速CMOSカメラ「Tomo-e Gozen」試験機を組み合わせて、撮影に成功した。天文観測でよく使われるCCDカメラとは異なり、CMOSは高速読み出しが可能であり、今回のように短い時間で変動する現象をとらえるのに向いている。
地球スイングバイは、探査機が地球に接近して離れる際に、地球の公転の進行方向の後ろを通過すれば加速し、前を通過すれば減速できる。今回のスイングバイでは後ろを通過し、はやぶさ2の太陽に対する速度は秒速約30.3kmから約31.9kmに加速した。無事にリュウグウに向かう軌道に乗っていれば、今後太陽を約2周して、2018年夏ごろリュウグウに到着する予定だ。
*スイングバイとは、惑星の重力と公転を利用して軌道を変更する方法のこと。
画像提供:東京大学木曽観測所