山梨大、尿からクローンマウス 絶滅危惧種保護の可能性
山梨大学の水谷英二助教らの研究グループが、尿に含まれていた細胞からクローンマウスの作出に成功したと発表した。野生の絶滅危惧種を保護できる可能性があるという。1日、英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』オンライン版に掲載された。
尿に含まれる体細胞は、無菌状態で回収できれば増殖は可能だが、絶滅危惧種など野生動物から尿を無菌的に採取することは難しいことや、小型動物からはわずかな尿しか回収できないという課題があった。
同グループは今回、非無菌状態でマウスの尿を採取し、尿中の細胞を直接核移植に使用した。オスでもメスでも、老齢個体でもその尿細胞からクローンマウスを作出でき、さらにオスとメスのクローンマウスを交配させたところ正常な繁殖能力を有することが確認できたという。
絶滅危惧種は人に慣れておらず捕まえて体を押さえつけるだけで死んでしまう危険性があるため、扱う際には動物にストレスを与えずに体細胞を回収する必要があった。今回の成果は、体を一切傷つけずにクローン個体を作出する重要な手段になり得るため、野生動物など尿を無菌状態で採取することが困難な動物や、小型で回収できる尿量が少ない動物でもクローン個体や樹立が比較的簡単なクローンES細胞を作るのに十分な細胞数が得られるという。
今後、排尿後何時間まで尿細胞が核移植のドナーとして使えるかを検討する予定。
(写真はイメージ)