アフガニスタンの壁画復元 東京芸大が特別企画展
東京芸術大学(東京都台東区)の陳列館で、6月19日まで「アフガニスタン特別企画展」が開催されている。日本で保護されたアフガニスタン流出文化財と、2001年に破壊されたバーミヤン東大仏の天井に描かれていた「太陽神と飛天」を原寸大で立体的に復元した壁画が展示されている。入場無料。
壁画に描かれていたのは東西の宗教が融和した姿で、天然鉱物や動植物を素材とした顔料が用いられていた。焼失した法隆寺金堂壁画の源流ともいえる。復元には、1970年代に撮影され京都大学に残されていた写真をもとに高精細デジタル化し、東京芸術大学COI(革新的イノベーション創出プログラム)が持つ特許技術を使用。この技術は法隆寺金堂壁画の復元にも用いられた。現地と同質の素材を使って壁の質感や顔料の盛り上がりといった細部まで完全に再現した。
同大学の学長であった故平山郁夫氏は、アフガニスタンから海外流出した文化財の保護を国際社会に訴え、ブラックマーケットなどを通じて日本に辿り着いたものを「文化財難民」として保護・保管を行ってきた。その中には、「ゼウス神像の左足」、「カーシャパ兄弟の仏礼拝図」など、かつてアフガニスタンの国立カブール博物館に所蔵されていた国宝級の美術品も含まれる。これらの文化財は、来春、本国に返還される。
海外に流出した文化財を戻し、破壊され失われた壁画を復元する――。日本の伝統文化と科学技術の融合によって、平和への祈りが実体化する。
天井壁画と、スクリーンに映る東大仏天井部から望むアフガニスタンの様子。
流出文化財の展示。奥に見えるのが、ゼウス神像の左足から復元した像。
(冒頭写真:東京芸術大学大学美術館ホームページより)
【施設情報】
東京芸術大学大学美術館 陳列館
東京都台東区上野公園12-8
TEL:050-5525-2200(代表)
http://www.geidai.ac.jp/museum/
開館時間9:30~17:00、月曜休館(5月2日開館)