東大、インフル変異を高精度に予測 より効果的なワクチン製造へ
東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らは、季節性インフルエンザの抗原変異を高い精度で予測する技術を開発した。実際に流行するウイルスと、流行前にワクチンの製造で使用したウイルスの抗原性が一致しないリスクが減り、より効果的なワクチン製造が可能になる。英科学雑誌「ネイチャー・マイクロバイオロジー」のオンライン速報版で23日(米国東部時間)に公開された。
季節性インフルエンザの抗原は頻繁に変異するため、ワクチンの製造で使われるウイルスも毎年のように見直される。しかし、その変異を高精度で予測する技術がなかったため、予測したウイルスと流行したウイルスで抗原性が一致せず、ワクチンを接種しても十分な予防効果が得られない場合があった。
今回は、同研究グループが1999年に開発した、変異を持つウイルスを人工的に作ることができる「リバースジェネティクス法」を用いて、多様な抗原性を持つ季節性ウイルス株の集団(ウイルス・ライブラリー)を作り、ここからさまざまな抗原変異株を分離した。それらの遺伝子性状および抗原性状を流行株と比較し、抗原変異のパターンを分析することで、将来起こる季節性ウイルスの抗原変異を従来よりも高精度で予測できる技術を開発した。さらに、香港型A/H3N2ウイルスのライブラリーから分離した抗原変異株を分析し、実際のインフルエンザ流行シーズンに起きた抗原変異を事前に予測することに成功した。
同研究成果は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業、日本医療研究開発機構(AMED)(2015年度以降)革新的先端研究開発支援事業、文部科学省感染症研究国際ネットワーク推進プログラムなどの一環として得られた。
(冒頭写真はイメージ)