ツタンカーメン王の錆びない短剣、鉄隕石が材料であると判明
古代エジプトのツタンカーメン王(紀元前14世紀)の石棺から見つかった、鉄製だが「錆びない短剣」の刃を分析した結果、鉄隕石を材料としていたことがわかった。この論文は、国際隕石学会が発行する学術誌『メテオリティクス&プラネタリー・サイエンス』で20日に公開された。
イタリアの研究者がポータブル蛍光X線分析装置で調べたところ、この短剣の刃の組成は鉄と、重量比で10.8%のニッケルと0.58%のコバルトだった。一般に、鉄隕石中のニッケル含有量は5%から35%、ニッケルとコバルトの比率は20程度であるため、鉄隕石由来であることが強く示された。
また、隕石情報データベースでエジプトを中心に半径2000km以内で見つかった既知の20個の鉄隕石を調べると、そのうちの1つが短剣の刃の組成に近いもので、11.77%のニッケルと0.437%のコバルトであった。この鉄隕石はリビアとの国境に近い場所(北緯31度07分57秒、東経25度02分50秒)で2000年5月8日に見つかった。
ゲルゼー墳墓で見つかった紀元前3200年ごろのビーズも、鉄とニッケルの合金にコバルトなどが混ざったもので、鉄隕石由来であると2013年に報告されている。古代エジプトでは装飾や儀式に用いる小物を作るために鉄隕石に大きな価値を見いだしていたと考えられる。
メソポタミア、ヒッタイト、およびエジプトの古代の象形文字には「空の鉄」と読める組み合わせがある。これが鉄隕石を指しているのなら、古代人たちは空から降ってきた貴重な素材であると理解して使っていたのかもしれない。
画像:『The meteoritic origin of Tutankhamun’s iron dagger blade』より
(冒頭画像はイメージ)