「国境なき医師団」がEUからの支援金を拒否 難民政策への抗議
国際医療NGO「国境なき医師団(MSF)」は欧州連合(EU)の難民政策に抗議し、EU関連機関および加盟国からの支援金を今後一切受け取らないことを表明した。17日付の独シュピーゲル・オンライン版が報じた。
今年3月、EUとトルコの間で取り決められた難民同協定では、難民の密入国を手引きする業者を根絶する目的で、中東やアフリカなどからギリシャに入国した難民をトルコに強制送還することで合意。一方で、その中に含まれるシリア人の数だけ、トルコにとどまるシリア人難民をEUで受け入れるとしている。
MSFは、「自分の国から逃亡を余儀なくされ、保護を必要としている妊婦や小さな子供、単独の未成年者などの弱者が同協定によって悲惨な状況に置かれており、我々は毎日その現実に直面している」として、EUによる「切り捨て外交」を激しく非難。MSFによると協定以降、保護を求める8000人以上の人々がギリシャの島に留め置かれており、数カ月にわたって劣悪な環境の中で過ごしながら、トルコへの強制送還を待っている状態にあるという。
MSFは昨年、合計5600万ユーロ(約66億3600万円)の支援金をEUから受けており、このうち1900万ユーロ(約22億5150万円)がEU本部から、3700万ユーロ(43億8450万円)が加盟国各国から支払われていることを明らかにしている。今回の決定は即時にMSFのすべてのプロジェクトに該当するもので、今後MSFはこれに代わって民間からの寄付による運営体制を強化するとしている。
※1ユーロ=118.5円で換算(2016年6月21日時点)