富士山でAED普及プロジェクト ガイドが携行し安全向上へ
富士山が山開きした1日、富士山で自動体外式除細動器(AED)を普及させるための「富士山アウトドアセーフティ―プロジェクト」が始まった。富士山と富士山麓で使えるAEDの数を増やして適正配置を進めたり、ガイドがAEDを携行したりすることにより、登山者の安全性の向上を図る。電気関連サービスのタケカワ(山梨県富士吉田市)、富士山観光事業の合力(山梨県富士吉田市)、ヘルスケア用品などのメーカー・フィリップスエレクトロニクスジャパン(東京都港区)の3社によるプロジェクト。
合力は「富士山登山学校ごうりき」の富士山スカイトレイルツアーで、ガイドがAEDを携行しながら富士登山者の安全をサポートする。タケカワはフィリップス製のAED 1台を寄贈、フィリップスは8台を貸与している。プロジェクト実施期間は9月10日まで。
富士山の吉田口登山道の山小屋ではすでにAEDを配置しているが、救命率を上げるには5分以内の除細動が必要。山小屋から離れた場所にいてもガイドが携帯していれば、緊急事態に対応できるという。
富士山では2010~14年の5年間で364件の遭難事故が発生し、50人が死亡に至っている。年間平均遭難事故件数はその前の5年間にあたる2005~09年のほぼ2倍。2010~14年の富士山の年間平均登山者数は30万人を超えている。世界遺産に登録されたこともあり、今後は海外からの観光客の増加も見込まれ、AEDの適正配置が課題となっていた。
AEDによる除細動(電気ショック)は、突然の心停止の主要な原因である心室細動という不整脈に対する最も有効な治療法となる。突然の心停止からの救命の可能性は1分経過するごとに7~10%ずつ低下していくが、胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸などの心肺蘇生を実施することで、救命の可能性が高くなる。特にAEDによる除細動をした場合、救命率は約5倍になる。
AEDの使用が一般市民に認められた2004年から2014年末までの10年間に、駅や学校などの一般施設向けに販売されたAEDは累計約51万6000台に上った。しかし、目撃された心原性心停止に対してAEDが使用された件数は約3.5%にとどまっている。その理由の1つに、AEDを所有していても、すぐに使用できる場所に設置されていなかったことが挙げられている。
(写真はイメージ)