日本野鳥の会、カンムリウミスズメの人工巣による繁殖に世界初成功
日本野鳥の会は22日、絶滅危惧種のカンムリウミスズメの人工巣による繁殖に成功したと発表した。6年前から伊豆半島の南にある無人島・神子元島に人工巣を設置し、改良を重ねてきた結果、この春に3つがいが繁殖し、5羽のヒナが巣立った。カンムリウミスズメが人工巣を利用して繁殖に至ったのは世界初だという。
カンムリウミスズメは日本近海と韓国周辺のみに生息する海鳥で、体長は約22~26.5cm、体重は139~213g。推定個体数は5000~1万羽程度で、環境省の絶滅危惧II類、国の天然記念物に指定されている。繁殖期にだけ無人島に上陸し、岩の亀裂や隙間などに巣を構える習性がある。近年、海でのレジャーの拡大で無人島にも人が立ち寄るようになり、人の移動とともに島に入り込んだネズミや、ゴミやまき餌に誘引されて飛来したカラスなどに捕食され、繁殖が阻害されていた。
野鳥の会の人工巣設置の取り組みは、2010年にスタート。最初の3年は利用されず、自然の巣のサイズや形などの状態を調べるとともに、捕食者の状況を調査しつつ改良を重ねた。2015年には、センサーカメラの調査で天敵であるハシブトガラスが岩の割れ目や人工巣を覗き込んでいることや周囲で成鳥を捕獲していることが判明し、カラス対策を強化することで今回の成果につなげた。
野鳥の会は、今後さらに改良を加え、カンムリウミスズメの個体数増加を図るとともに各繁殖地を確保することで保護増殖に取り組んでいくとしている。
画像提供:日本野鳥の会