ビッグデータ同化でゲリラ豪雨を予測
理化学研究所の三好建正チームリーダーらは、最新鋭の気象レーダーを用いて局地的な「ゲリラ豪雨」を予測する手法を開発した。2012年に日本で初めて稼動したフェーズドアレイ気象レーダーにより得られた膨大な観測データを使い、スーパーコンピュータ「京」上のシミュレーションの値を補正する「ビッグデータ同化」により、100mごとに区切った各地点での観測データを30秒ごとに更新して、30分先までの天気予報を実現。実際のゲリラ豪雨の動きを再現することに成功した。この成果は、8月末にアメリカ気象学会の機関紙(8月号)に掲載される。
現在、気象庁の天気予報は、日本全国を2kmごとに区切った各地点での観測データを1時間ごとに取り込んでデータ同化している。しかしゲリラ豪雨の場合、わずか数分で積乱雲が急激に発生・発達するため、予測が困難だった。また、2km区切りのデータでは、ゲリラ豪雨を引き起こす積乱雲を十分に描けなかった。
今回の手法では、スーパーコンピュータ「京」を使うことで、100mや10m区切りでの高精細なシミュレーションで、ゲリラ豪雨を引き起こす積乱雲の内部構造まで詳細に描くことができる。また、フェーズドアレイ気象レーダーでは30秒ごとに100mの区切りで半径60kmの範囲で従来とは桁違いに膨大な観測データを得ることができる。この双方のビッグデータを組み合わせることで、空間的・時間的に桁違いな天気予報シミュレーションを実現し、実際のゲリラ豪雨の動きを詳細に再現することに成功した。
ただし、本来30秒以内に完了しなければならないデータ同化の計算に、現状ではまだ約10分かかっている。実用化に向けては、30秒ごとに得られる観測データを30秒以内に処理できるように、データ転送や計算の高速化が必要だ。この研究は科学技術振興機構(JST)の支援を受けて行われた。
画像提供:科学技術振興機構(JST)