海外在住者がもらってうれしいお土産 ドイツ編(2)ブラックサンダー
海外に住んでいるといろんなおみやげを日本からいただくことがありますが、今回は、大事なのは中身より気持ち! かもしれない……というお話です。
1990年代にドイツ留学していた知人のエピソード。
ある日、日本の実家から小包が届きました。その前に、「食料品を送っておいたから」とお母さんからの手紙が来ていたので、喜びいさんで小包を開けたところ……中に入っていたのはお米(これはよしとしましょう)、乾パン、コンビーフなどの缶詰、その他、非常食の数々だったたそうです。日本のお母さん(戦時中生まれ)にとって、息子が遠いドイツにいるということは、戦地か食糧難の地域にいるに等しい感覚だったようです。
「でも、これを荷造りしている時のお母さんの気持ちを思うと、なんだかほろりとなったんだよ」
彼はそんなふうに話してくれました。
さて、時は流れて21世紀。先日、この「非常食小包」のエピソードを急に思い出すできごとがありました。日本から来た友人(男性、20代後半)から手渡されたおみやげが……ブラックサンダーのお徳用パックだったのです。
記者 「ありがとう。しかし、なぜにブラックサンダー?」
友人 「いやー、これ、今日本で流行ってるんすよ! おいしいっすよ」
そうか、自分の好きなものをおみやげに。これは定番の法則ですね。
しかし、ドイツにもチョコバーやチョコレートはあるのに……という言葉をぐっと飲み込みました。ロシアの諺に「贈られた馬の歯を見るな」というのがあるそうです。つまり、「贈り物にケチをつけるな」という意味。
とりあえず、いただいたブラックサンダーは、テーブルの上のお皿に山盛りにしておきました。が、思ったより早くなくなりました。ドイツのこってりしたチョコレートに比べて、ブラックサンダーはさくっとした軽い食感なので、ドイツのお菓子がちょっと苦手な日本人の友人が遊びに来たとき、結構喜んで食べていたのです。私の知らないところで、ドイツにも一定のブラックサンダー需要があることが確認されました。
ちなみにブラックサンダーを持ってきてくれた友人ですが、その後、伝説が独り歩きし、私の周辺では「ブラックサンダー 昇一」と呼ばれています。