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【特集企画~書評(健康・医療編)】 『依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実』~あらゆるモノにハマる現代人(1)

以前、「年末年始の健康管理法【後編】~過食のメカニズムを学んで健康に」という記事を医師の視点で書き、「糖尿病=糖質依存」と考える視点が重要だと主張したいと書いたのに対し、多くの方々から賛否両論のコメントをいただいた。その中で、関連する参考書を教えてほしいというコメントがあった。この際、単に書名を伝えるのではなく、書評として書くことにした。

まず、紹介したいのが以下の書籍である。

『依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実』(原題『The Fix』(2012))
デイミアン・トンプソン 中里京子訳(2014) ダイヤモンド社

デイミアン・トンプソン氏略歴
1962年英国生まれ。オックスフォード大学卒業後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で博士号(宗教社会学)取得。元『カソリック・ヘラルド』紙編集長。現在は『デイリー・テレグラフ』紙のレギュラーライターおよびテレグラフ・メディアグループ敏腕ブログエディター。

著者のデイミアン・トンプソン氏は、一流のジャーナリストであると当時に依存症の当事者である。18歳でアルコール依存症となったが、32歳から20年間断酒を継続してきたという。断酒そのものは簡単だが、続けるのは至難の業なので、20年間なら大成功と言える。しかし20年の間、筆者は「何かに依存したい」という病的欲求に悩まされ続けてきた。『日用雑貨店のお菓子の棚の前では10分間も、取りつかれたように商品をじっと見続けてしまう。CDを買い込む癖には、破産寸前にまで追い込まれた』そうである。

何かにハマって起こる問題が執拗に続く状態を表す用語は、<依存症>と<中毒>の他に、<嗜癖>がある。<中毒>はもともと、自分の意志ではなく、不可抗力で体内に入った物質に有害作用による疾患を意味していた。火事に巻き込まれた人の一酸化炭素中毒、水俣病における水銀中毒などだ。しかし、アルコールのように自分の意志で摂取した場合にも<中毒>という用語が使われるようになり、混乱が生じた。そのため、自分の意志で摂取した場合は<依存症>という用語を使うことになった。今でいう「アルコール依存症」は、以前は「慢性アルコール中毒」、「慢性酒精中毒」という診断名だったのである。その後、ハマる対象が「物質」ではなく、「人」や「行為(ギャンブル、買い物)」である場合にも<依存症>を使うようになった。ところが、依存症の人から見ると、ハマる対象が複数ある人の方が多く、その場合「○×依存症」という診断名を羅列するのはスマートではない。そこで登場したのが<嗜癖>という用語である。<買い物嗜癖>というように<依存症>と同じ使い方もできるが、多くの対象への依存症がある場合に、<交差嗜癖>という用語を用いると、一言で表現できて便利である。また、<交差嗜癖>を持っている人を<嗜癖者>と呼ぶことも多い。日本語の<交差嗜好>より、英語の「cross addiction クロス・アディクション」の方が頻用されており、<嗜好者>も、英語の「addict アディクト」の方が頻用されている。

著者は、「お菓子や音楽CDは”依存性物質”だと社会的に認知されていないのに、なぜ依存の対象になるのか?」と疑問を持ったところから調べていくうちに、自らがクロス・アディクションであることを認知した。ジャーナリストであるがゆえに、そこにとどまらず、研究論文も多数読破し、アディクションを作り出す側の人への取材を経て、同書が誕生した。

少し長いが、同書の目次を以下に示す。目次を眺めるだけでも、巧みな戦略により全世界規模でクロス・アディクションが人々の脳に深く浸透していることが見て取れるだろう。

次回は、同書を読んで、自らをこのアディクションから守ることについて考えてみたい。
【特集企画~書評(健康・医療編)】 『依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実』~あらゆるモノにハマる現代人(1)

【特集企画~書評(健康・医療編)】 『依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実』~あらゆるモノにハマる現代人(1)

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【特集企画~書評(健康・医療編)】 『依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実』~あらゆるモノにハマる現代人(1)
(冒頭写真はイメージ)