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年末年始の健康管理法【後編】~過食のメカニズムを学んで健康に

医学が進歩し、医学情報が溢れているのに、なぜこれだけ糖尿病が増えたのか?

専門家によって見解は分かれるが、依存症の治療を専門とする筆者としては、「糖尿病=糖質依存」と考える視点が重要だと主張したい。脂質はいくら摂取しても糖尿病にはならないが、肥満にはなるので、「肥満=糖質+脂質依存」と考えられる。

アルコール依存症の人は、断酒すると、それまで見向きもしなかったケーキ、チョコレート、ポテトチップなどを過食するようになることが少なくない。一過性のもので特別な治療は必要ない人が多いが、糖尿病や脂質代謝異常を合併している場合は、摂取する制限が必要であるにもかかわらず、制限できず深刻な健康問題となることがある。最近の研究では、栄養素のうち、糖質と脂肪には依存性があることがわかってきた。依存性が生じてしまうと、栄養素を消費した分だけ摂取しても、摂取行動が止まらず、過剰に摂取してしまうことが明らかになってきている。

2015年10月1~3日、この問題に焦点を当てたシンポジウム「依存症と肥満症:脳科学と異分野融合が拓く新しい医学と医療」(第36回日本肥満学会学術総会)が名古屋市で開かれた。これらの栄養素に依存性があるという研究結果が発表された。糖質依存については、八十島安伸さん(大阪大学大学院人間科学研究科行動生理学研究分野)の講演「味覚報酬による強化行動としてのショ糖過剰摂取に脳メカニズム」によると、マウスに、毎日、一定時間、餌と砂糖を同時に自由に摂取させると、日が経つにつれ、餌の摂取量は増えないが砂糖の摂取量はどんどん増えていくことが分かった。餌に加えてブドウ糖を静脈注射しても摂取量は増えていくという。

脂質依存については、小塚智沙代さん(琉球大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座)が「天然食品由来有効成分による高脂肪食依存性改善の分子メカニズム」について講演した。それによると、ラットに高脂肪食を摂取させて慣らすと、薬物やアルコールより脱却が困難であったという。また、人間の健常者は食事をすると、脳の線条体という部位が活性化して食行動にストップがかかるが、高脂肪食を摂取して肥満になった人は、食事をしても線条体が活性化されず食べ続けてしまう。こういう状態の人への治療として、ナノ粒子にしたガンマ・オリザノール(玄米に多く含まれる)を2週間摂取すると、肥満者の食事摂取量が低下することを確認したという。

以上から、糖質と脂質は、食品であると同時に、脳に対してはアルコールと同じように「薬」として作用し、依存形成や過剰摂取をもたらすことから<マイルド・ドラッグ>と呼ぶことが提唱されている。

毎日接する「食」だからこそ、正確な知識を持ち、健康で長く生きしましょう。

(写真はイメージ)

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