睡眠に関わる2遺伝子を筑波大が特定 メカニズムの解明に前進
筑波大学の研究グループは、睡眠と覚醒の制御に関わる2つの遺伝子を世界で初めて特定したと発表した。これにより、睡眠と覚醒の切り替えの機構や、脳内での「眠気」の実体の解明に繋がることが期待される。この研究は2日、英科学誌『Nature』に掲載された。
私たちは普段当たり前のように睡眠を取っているが、睡眠中は、脳が活発に活動する「レム睡眠」の状態と深く眠っている「ノンレム睡眠」の状態を交互に繰り返すことが知られている。しかし、この睡眠のメカニズムや役割について、神経科学の観点では、いまだに多くのことが明確には説明することができてないという。特に、日々の睡眠量をほぼ一定に保つメカニズムや、睡眠と覚醒をどのようにして切り替えているのかについては、全く分かっていないとされる。
そこで同研究グループは、マウスを使って睡眠の制御に関わる遺伝子を特定するための実験を行った。実験に使用したのは、ニトロソウレアという化学物質を使ってゲノムに無作為に変異を起こしたマウス8000匹で、ゲノムがそれぞれ異なるため、体の大きさから知能、性格まで異なる。その中から、各個体の脳波・筋電図をもとに、睡眠に異常のあるマウスを探し出し、2つのグループに分けた。睡眠時間が正常なマウスの1.6倍以上になる「睡眠時間の長い」マウスのグループと、レム睡眠が少ないマウスのグループのゲノムを調べ、各グループと「正常なマウス」では、ゲノム上のどこに違いがあるかを解析した。
この解析により、睡眠時間の長いマウスではSik3という遺伝子が、レム睡眠が少ないマウスではNalcn遺伝子が、それぞれ正常のマウスとは異なることを突き止めた。さらに、実験の結果から、SIK3タンパク質はノンレム睡眠の必要量の決定に、NALCNタンパク質はレム睡眠の終止に関わっていることが考えられるという。
今回の結果を踏まえて、睡眠・覚醒に関するメカニズムが一層明らかにされることで、将来的には睡眠障害の治療にもつながることが期待される。
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