フランスとドイツのいいとこどり? ストラスブールのアルザス料理~ドイツ街めぐり・食めぐり(番外編1)
今回は、ドイツからほんの少しだけ足を延ばしてドイツと国境を接する町、フランス・アルザス地方のストラスブールのご当地料理を紹介したい。
アルザス地方はロレーヌ地方とともにかつて、フランス領になったりドイツ領になったりという目まぐるしい歴史を経験してきた場所。実際には、住民の大半はアレマン系のアルザス人で、フランス語ともドイツ語とも異なるアルザス語を話し、独自の文化を持つ人々だ。
さて、いわゆるアルザス料理というのは一見ドイツ料理に似ていて、素朴な肉料理やシュークルート(ザウアークラウト)などが定番。しかしそこにじゃっかん、フランス的な要素が加わり、ドイツ的素朴さとフランス的繊細さの融合とも言うべき絶妙な食文化を作り出している。アルザスが美食の地域と呼ばれるゆえんはそんなところにある。
今回訪れたレストランは、ストラスブール市街の狭い路地を少し入ったところにある「シェ・イヴォンヌ」。美食の街にふさわしく、しゃれたレストランやパティスリー、カフェがひしめく中で、ちょっと隠れ家的な立地が魅力だ。赤いギンガムチェックのカーテンや、カントリー調のインテリアで統一された店内は、おしゃれだけれどくつろげる、居心地の良さにあふれている。
椅子の背の部分がアルザスの民族衣装を着た女の人の形になっている
定番メニューからジャンボノー(Jambonneau: 16.50ユーロ=2128円)とトランシュ・ドゥ・ドドゥ・ポルスレ(Tranche de dos de porcelet: 16.40ユーロ=約2115円)をオーダーした。ジャンボノーは、フランス語でハムの意味だが、これはドイツ料理でもおなじみの、ブタのすね肉を煮込んだアイスバインのこと。ベルリンのレストランでは、付け合わせにザウアークラウトと豆のピュレが出てきたが、ここではシュークルートとゆでたジャガイモ。ドイツでは、マイルドなマスタードをつけて食べるが、アルザスではマスタードとホースラディッシュの両方が出てきて、好みのものを選べる。ドイツと比べて、肉もシュークルートも塩加減が控えめで、あっさりした味わいなのに驚かされる。酸っぱさが特徴のドイツのザウアークラウトに比べて、このお店のシュークルートははるかに薄味で別物のようだ。そして、自然の滋味が感じられるジャガイモがおいしい。
ドイツ料理のアイスバインとは似て非なるアルザス料理のジャンボノー
もう一方のメインディッシュ、トランシュ・ドゥ・ドドゥ・ポルスレとは、詰め物をした子豚肉のこと。付け合わせにはサラダと炒めたジャガイモがつく。繊細な味付けだが、肉の醍醐味が味わえる満足度の高い一品だ。いずれにしても、ドイツ料理並みのボリュームなので、デザートはあっさりフルーツシャーベットで締めくくった。
ちょっとレトロな銀の器に入って出てくる、梨とレモンとイチゴのフルーツシャーベット
いわゆる高級フレンチとは異なる、家庭料理のような温かみの漂うアルザス料理。フランスでもドイツでもない独自の文化と歴史を持つ美食の街で、心もお腹も満たされること間違いなしだ。
エスプレッソのカップに、アルザスの民族衣装を着た子どもたちの姿が描かれている
*1ユーロ=約129円で計算(3月24日時点)
Chez Yvonne
10, rue du Sanglier
67000 Strasbourg
Tel: +33-388-328415
www.chez-yvonne.net
【営業時間】
11:45-14:15 / 18:00-23:30