ミシュランも認めた、ベルリンのヴィーガンレストラン~ドイツ街めぐり・食めぐり(2)
前回紹介したレストランは、「とにかくドイツ料理といえば肉だ」という感じだったので、今回は極から極へ…近年人気のヴィーガンレストランを紹介したい。
ヴィーガンとは、絶対菜食主義とも言われる志向。肉や魚だけでなく、牛乳および卵、そしてハチミツに到るまで、動物由来の食品を一切口にしないというものだ。はじめてこの概念を聞いた方は、まるでインドの修行僧のようなストイックな食生活を思い浮かべてしまってはいないだろうか(筆者はそうだった)。しかしこのヴィーガンが近年、ドイツで大きなトレンドとなっている。おしゃれなヴィーガンレストランやヴィーガンカフェが増え、一昨年、そのトレンドセッターとも言うべきベルリンのレストランが、ミシュランのビブグルマン(コストパフォーマンスのいい優良レストランに与えられる賞)を獲得した。彼らは決して、食の楽しみと対極のところにいる人たちではないようだ。今回はその気になるお店、ラッキーリークを紹介したい。
奥行きの広い店内。「菜食」をイメージするグリーンを配置したインテリア
ベルリンの中心部にほど近いプレンツラウアーベルク地区。小さな子どものいる家族世帯が突出して多く、さらにカフェやレストランがひしめくこのエリアに、ヴィーガンレストランのラッキーリークがオープンしたのは2011年4月。インドネシア人の父親を持つドイツ生まれの女性シェフ、ヨジータ・ハルタンドさんが作る、クリエイティブでバラエティに富んだメニューがオープン当初から人気を呼んだ。
子どもの時から料理好きだったというヨジータさん自身がヴィーガンになったきっかけは、食用として飼育されている動物たちの劣悪な飼育環境や、大量に食料品が廃棄される食品ロスの問題を知ったことだったという。彼女のヴィーガンメニューにはこだわりがある。それは、いわゆる肉の代用品的な料理を作らないこと。野菜の特性を生かしたまったく新しい料理の世界を作り出すことだ。
3皿メニューコース(35ユーロ)では、前菜はタンドーリ・カリフラワー。インド料理のタンドーリ・チキンの鶏肉の代わりにカリフラワーを用いて、キムチやシンプルな海苔巻きがそれを取り囲む。斬新な組み合わせの多国籍料理の世界を、野菜だけで作り出している。
メインディッシュはサツマイモのクレープとロールキャベツ、トマトのグリルが色鮮やかに皿の上に並ぶ。肉料理の場合は添えになる野菜が、ここでは主役だ。クリームソースやチーズの代わりにはナッツが絶妙に使われ、物足りなさを感じさせない味わいのハーモニーに一役買っている。
そしてデザートのカシスシャーベット、ムース・オ・ショコラ、味噌の入った小さなケーキは、すべて卵も牛乳も使われていないが、洗練された味わいの絶品だった。
菜食メニューと言えば、日本にも精進料理があるが、野菜を肉や魚の脇役と考えるのでなく、野菜自体の持つすばらしさに着目したときに生まれる料理の可能性は無限大だ。さらにヴィーガン料理は、食後に胃の負担感が少なく、体の中がきれいになる感じがうれしい。
難点を言うならば、ヴィーガンレストランは傾向として、ドイツの一般的な料理に比べて分量が極端に少ない。まるで懐石料理を食べているような慎ましさがその特徴。なのでこの店を夜に訪れるならば、昼はきちんと食べて行った方がいい。
(in association with the GNTB/協賛:ドイツ観光局)
クオリティーの高いデザート。もちろん卵も牛乳も使われていない
Lucky Leek
Kollwitzstraße 54
10405 Berlin
+49-030-66408710
http://lucky-leek.com/
【営業時間】
18:00-22;00
*月火休み